ファンタジー学園  まず世界観を説明します。  ファンタジー学園は生徒たちが命を懸けた冒険を通じて学力と社会適性を向上することを目的とする学園です。  志願すれば誰でも入学でき、卒業後は大学進学も就職も100%思いのままですが、生存率が35%しかありません。  生徒は主にモンスターに襲われて死にます。  だから、手ごろなモンスターを相手とする戦闘訓練が主な日課になります。  モンスターと戦う手段としては剣と魔法があります。  剣はほぼ無制限に支給されており誰でも使えますが、体力や運動神経が優れてないと使いこなせません。  魔法は未知のベールに隠されており、少なくとも入学時には使用条件が明らかになっていません。  ファンタジー学園は東京都にありますが、異世界の治外法権が適用されています。  校長はそれをいいことに、この世界の物理法則を超えてモンスターの軍勢や恐ろしい魔法を操ることから、魔王と呼ばれています。  魔王を倒せばファンタジー学園のシステムにアクセスできるようになるらしいですが、いまだかつて誰にも倒されたことがありません。  魔王と戦えばほぼ確実に即死するので、戦おうとする生徒は滅多にいません。  あなたはファンタジー学園に通っている男子生徒です。  あなたのスペックは極端です。  運動はからきしだけど知能と意志力は図抜けている、という設定になっています。  傲慢な天才策略家タイプですが、普段は猫をかぶって無能を装っています。  そのうえあなたの容姿は中肉中背だけどぱっとしない顔立ちなのであまり魅力はないはずです。  けどなぜかそのこととは無関係に無闇に女子にモテます。  次に読み方を説明します。  1.このテキストをローカルに保存してください。  2.あなたの名前を考えてください。  3.テキストエディタの置換機能で「$PlayerName」を名前に置き換えてください。 ☆  一ヶ月の準備期間が終わってクラスメートが互いのことを認識できたところで、パーティ決めになった。  クラスメートは40人おり、10個のパーティに分割される。  1パーティあたり4人ということになる。  パーティ決めは生徒同士の相談となり、クラスは一気に騒然となった。 「$PlayerName、あんたどうせ誰にも相手にされないでしょ。可哀相だから私のパーティに入れてあげる」  橘慧子がいの一番に声をかけてきた。  橘慧子はあなたの幼馴染でたいへんな美人で性格も明るい。  成績は語学系と美術に優れ、運動神経も軒並み良い。  なおかつ対外的には笑顔を振りまき、あなたに対しては勝気で攻撃的という二面性を備えている。  だが彼女は実はあなたのことが恋愛的に大好きだ。  あなたはそれを見抜いており自分の自我を存分に充足させているが、迷惑顔をして一定距離を保っている。  恋心を拒むも受け入れるもあなた次第という状態が常に維持されていた。  ほかにも五人の個性的な女子からの誘いが来てあなたの取り合いになった。  あなたは、ちょっと俺の意志はどうなるの〜トホホ、という顔をしながら全員のスペックを吟味していた。  女子たちの間でひととおりの悶着があり、計らずも「$PlayerNameは誰がいいの、選んで!」という事態になった。  あなたは遠慮なく3人の女子を選択する。  戦闘力そのほかのバランスを考慮して、以下の構成にした。  魅力に関してはどの女子もそれぞれ独自の良さがあり甲乙つけがたかったので、考慮外とした。  ・中村強固      :美人。愉悦が顔に張り付いている。体は細いのになぜか怪力で剣士として使えそうだったので選抜。  ・牧野友美恵     :美人。ストレートロングの似合う一見上品な女子。あなたの知能とは方向の違う、異質な発想を評価。  ・リサ・ロスチャイルド:美人。肌が白い。ユダヤ系の帰国子女。一度だけ魔法を使ったのをあなたは見逃さなかった。  橘慧子も悪い人材ではなかったが、ほかと比べるとスペックがややノーマル過ぎるきらいがあり、不採用とした。  あなたが謝ると、 「信じらんない! あんた絶対後悔するよ! 死んでもしらないんだから! べー」  と自己演出する余裕を見せつつほかのパーティに入っていった。 ☆  冒険開始と共に友美恵の開口一番の提案「じゃあ今から魔王を倒そう!」はさすがに死ぬので無視し。  あなたがたは順調に、かつ他のパーティよりも高スピードでモンスターを狩り、戦闘に習熟していった。  戦闘は主に強固とリサが剣で敵を倒し、あなたは棒立ちで、友美恵はうろちょろと奇行に走っていた。  リサは魔法を使おうとしなかった。  ある日、あなたはリサに魔法について聞いた。 「あれはすごく精神を消耗するのよね。  剣を振り回した後のある意味サワヤカな肉体的疲労とは違うの。  こう、三時間ぶっ続けで説教されたときみたいに、なんかこう……グッタリしちゃうんだ。  だからなるべくなら、使いたくないわけ」  ただ、呪文さえ知っていれば魔法を使用すること自体はそれほど難しくないそうだ。  あなたがたはリサに頼み込んで、呪文を教えてもらおうとした。  いざという時に使えるかも知れないからだ。  リサはしばらく渋ったが、やがて根負けして13種類の魔法を教えてくれた。 ☆  強固が泡を吹いて死んだ。  友美恵があれから魔法を乱発しまくった挙句、敵を窒息死させる魔法を暴発させてしまったのだ。  リサがわめいた。 「何やってるの、馬鹿じゃないの!? だからイヤだったのよ!」  悪びれもしない友美恵をさんざんなじった後、リサはあなたがたにも教えなかった蘇生の魔法を強固に使用した。  強固は蘇った。  リサは鬱になった。 ☆  それからパーティは、行動する気力を全く失ってしまったリサの世話にかかりきるようになった。 「$PlayerName……$PlayerName……ウー」  リサの振る舞いはまるで幼児退行したみたいだった。  パーティは全員あなたのことが好きだったが、リサは特権的にあなたに甘えることが出来た。  友美恵はリサの真似をして自分もあなたに甘えようとしたが、そのたびにリサに突き飛ばされた。  戦闘は強固一人でも何とかなった。  友美恵はその間に踊ったり虫が沸く魔法を使ったりして場を混乱させ、強固の足を引っ張った。  彼女は魔法を使いまくっているというのに、リサと違って元気を失う気配は微塵も感じられなかった。 ☆ 「$PlayerName。これからどうするの」  放課後、いくつもの巨大な目玉が切り捨てられて血を流している、放課後の教室で。  リサの顔にファンデーションを塗りながら、あなたが以外で唯一まともな精神を保っている強固が尋ねてくる。 「卒業までの生存は余裕だね。私を頼ってくれていい。魔王にさえ手を出さなければもう負けはまずないよ。  けどその後は?  友美恵は放っておいても友美恵なりに異常に暮らしていけるだろうけど、リサはもう大学とか就職とかそういう次元じゃなくなってるよ。  つーかこの子、あんたから離れられないのよね。引き剥がしたら死んじゃいそうだよ」 「そう言いつつもお前だって俺と一緒にいたいんだろ」  あなたの言葉に強固は不意を衝かれて一瞬止まる。  止まったが、すぐに、クッ、と笑った。 「そりゃ当然だけど、今してるのはリサの話よ」 「俺たちさ」  あなたは窓の外を見た。  校庭の向こうは、何の変哲もない繁華街だった。 「3年も一緒にいたんだよな。なんかあっという間だったけど」 「……ん。そうね」 「俺はさ。強固もリサも友美恵も好きだよ。  別に学園卒業しても、同じ大学にでもいけるなら、」 「ざけんな! $PlayerName、おまえ死んだ方がいい!」  強固の膝の上で、リサが怒鳴った。 「誰が一番?」 「あー、ちょっとリサ……」 「強固は黙ってて! $PlayerName、あんたアラブの王様? みんな一緒? ふざけて?  ってか誰が一番? 誰が一番大事なの? みんな同じとか言ったら……」 「強固。好きなのは。」  あなたは即答した。  いつものように薄く笑っていた強固が、いきなり妙に苦い顔になった。多分照れ隠しだ。  リサが鼻白む。 「な……なによ。だったら……」 「けど病人補正でリサが一番ほっとけない。だから少なくともリサとは一緒にいる」 「はあ? そんなの……そんなんじゃ……なにそれ……」  リサは泣いた。  友美恵は魔法で鳩を出す。 Endia