最も恐れていたのは、誰も他人を信じられなくなることでした。
挨拶システムは「誰もが利己的になったら誰もが損をする」囚人のジレンマと呼ばれる構造になっています。これはプレイヤー間の疑心暗鬼を煽りたかったのではなく、「人と人は協力することがある」「人は人と戦うこともある」といったほかの要件を成り立たせるために考えたルールの副産物です。心配なのはそれで場が硬直することでした。
そのため蓋を開けたら協力状態で溢れかえったことには大いに安心しました。逆に争いがなくなり過ぎてHP回りの設定が本来の意図ではまるで機能しなかったのは誤算でしたが、平和の森公園が信用不在の貧困地獄と化すことに比べればずっとマシです。
午前中の最初の20分くらいは誰もホームに来ないので少し不安になりました。みんな☆を集め始めたばかりなのだから当然ではあるのですが。午前の部が終わるころには、ほとんどの人がホームに来て運命カードとジョブカードを取っていきました。
午後はヒマでした。
値段設定をからくしたせいもあり、第二ジョブ覚醒に来る人もほとんど来ません。忍び寄る嫌な予感。SPEは、PIPに比べると要素が絞り込まれたゲームです。終了が近づくにつれて、「ゲームに仕込んだギミックが早い段階で消化され、午後はやることがない」が発生するのではないかという心配は少しずつ強くなりました。
その予想は一部当たっていたかも知れません。たくさん用意したピックアップポイントがあらかた堀り尽くされてしまったのです。
午後の部は二時間を取っていましたが、確かその半分も経たないうちに、全部で27あるピックアップポイントのうち25個を集める人が現れました。じすさんです。じすさんは☆をなんと47も取っており「これはもう優勝したでしょう!」と言ってきました。ぼくは内心「これはもう優勝だろう……」と思いながらも、それはぼくには分かりませんねと答えました。
最終的には、半数ぐらいのプレイヤーが25箇所のピックアップ欄を埋めていました。プレイヤー間でポイントの在り処が歯止めなく共有されたのでしょう。その原因は、ゲーム中に発生したチームの結束力が強かったことでしょう。GMとしては運命カードを投入することで、プレイヤーの目標が個人勝利とグループ勝利の半々ぐらいになることを期待していましたが、実際はほとんどの人が強固なグループを形成したようです。これはこれで面白い場になってはいるのですが、GMの狙いは根本的なところで外れてしまいました。
ジョブカードの存在により、ピックアップポイントが枯れた後にもやることはあったようで、ゲーム終盤でも輪になって、おそらく☆を増やすためにジョブスキルの使い方で議論を重ねているチームがいくつも見られました。議論は長く続き、それだけ色々考える余地があるのだろうと期待を持ちました。
誰も見つけることが出来なかったピックアップポイント2つは「彼岸花」と「赤き終焉(略)」です。彼岸花は、平和の森公園で下見を行った時点ではあちこちに咲いており、ネットで情報を見ても10月上旬まで咲くとあったので、賭けになるのを承知でピックアップポイントに採用しました。「赤き終焉」は、謎かけ風にぼかして書いたのが予想以上に誰にも伝わらず悲しい思いをしました。
「灯の剣」はじすさんのSPE予想放送を受けて急遽こしらえた剣です。人から人に伝わることを意図した剣で、全員に回るか回らないかという所を狙って、午後の最初にホームコマンドを実行した人に渡すことにしました。kurosさんは午後一番にホームコマンドを実行しかけたのですが、「ちょっと考える」と言ってすぐにはホームコマンドを実行せず、後から来たeikaさんに先を越される形となりました。kurosさんは何度も「GMと挨拶(戦闘)したいです!」と言ってきた人なのでぼくもよっぽど彼に渡したかったのですが、ルールを曲げる訳にはいかないので当初の取り決め通りeikaさんに渡しました。結局このカードは青チームだけで回され、他のチームには行き渡らなかったようです。
最終的にはチームによるジョブのコンボが☆の生成にブーストをかけて3桁数の☆所持者が生じ、221もの☆を獲得したeikaさんの優勝となりました。
ぼくにとって、とても充実した一日となりました。ほかの人にとってもそうであればと願います。
GMの至らなかった点も多分にありますが、予想外のことが実に多く発生し、多くの人が面白かったと言ってくれました。総じて、やって良かったと思います。
参加してくれたプレイヤーすべてのみなさんと、本イベントを主催するきっかけをくれたじすさんに、深く感謝を申し上げます。
そのほか印象に残ったこと……
- THEKIさんが、ゲーム開始前にツイッターで無差別範囲に結託を呼びかけていました。面白い! と思ったし積極的な行動を評価する意味でRTしましたが、その後になって知り合い同士が過剰に固まってしまわないか心配になりました。杞憂でした。
- ノノネヌさんが、VeNEさんにまとわりついて「1点だけ殴らしてください!1点だけ!1点だけ!1点だけ!」と迫り、VeNEさんが怖がって断っていたのがめちゃくちゃ面白かったです。聞くところによると、彼は他の人にも殴りを迫っていたそうです。
- amahisaさんがお昼ごろ、「俺《ハンター》なんですよ。殴りの時にパワーが1点上がる効果です」と確かそういったような嘘情報を、ハンターを引いたわけでもないのに吹き散らしておりました。ノノネヌさんが「ハンター!?」となぜか食いついたことが面白かったのですが、もしノノネヌさんがヴァンパイアだったら悪いので笑いをこらえていました。
- 午後にヒマでぼーっとしてたら、フジモトさんが「やってやりましたよ!!」と快哉を上げながら現れました。なんと、ヴァンパイアに銀弾を打ち込むことに成功したのです。実装したはいいものの発動するか不安だったので、ぼくも喜びました。
- ぶりさんが終盤に、スケッチブックに絵を描いて彼岸花だと言い張っていました。スケッチブックには17個も描かれていたのに、「15個!」と言い張っていました。
- ピロナスさんが、ステッパーズストップ側と呼ばれる人ばかりのチームに入ったことを「楽しい」と言ってくれていました。
現時点で確認された、ほかの人のオフレポです。考えてることや見える景色が全然ちがって面白い!
山本まともさんのオフレポ https://note.mu/ymmatomo/n/ne1d8fe2265ed
VeNEさんのオフレポ http://andymente.g.hatena.ne.jp/vened/20181006/p1
さまんささんのオフレポ https://tanbokun.at.webry.info/201810/article_1.html
ぶりさんのオフレポ https://mmm6969.web.fc2.com/spe.html