---------------------------------------------------------------------- ●過剰健康娘/「かわいそうなそら」 ---------------------------------------------------------------------- ・主人公  ・青井空(あおい そら)、女子  ・活発で祭り好き  ・よくしゃべる、明るい  ・ロマンチスト、変なとこでナイーヴ 「あーあ、毎日平和、毎日問題なし……退屈だなあ……退屈で死んじゃいそうだよう……」 「傷ついてもいいですよ、しんどいのも大丈夫です、平気です、たぶんいけます……  だから神様、このぬるーい温室の中で、ぐずぐず腐らせるのだけは、どうか、やめてください……」 「ああ……」 「危険を、冒す……、そう、冒険が、したい」 ☆  戦争が起こる。 「やったーっ!!! 何か起こったーーー!」 ☆  爆撃のせいで、さっきまで話してたクラスメートが死ぬ。 「わあー! 十何年かけて生きてきたすべてが一瞬でパアに!!  ちょっと星巡りが違えばあたしが死んでた!!!  すげーすげー、まじにデッドアライブの世界だ!!  これだよこれ、この目の覚めるような空気! 晴れ渡る視界!  あたし、わくわくしてきたよーーーー!!」 ☆  敵国の歩兵が乗り込んできて、そこら中の民家に侵入してきて虐殺される。 「空、あなたは隠れてるのよ!」 「はーい」 (兵隊さんにあたしじゃ勝てないしな……2〜3レイプくらいは我慢できるよ、  でも、さすがに死んじゃっちゃあつまんないからねえ。仕方ない、隠れるか)  ワクワクドキドキで襖の間から覗き見。  兵隊が二人あがってきて両親が殺される一部始終を目撃。  兵隊は一人だけ帰っていく。もう一人は母親を犯す。  にもかかわらず、ゼロトラウマ。 (このまま息を潜めてればサバイバーだ……でも) (それじゃあつまんないよね!!)  実は包丁を持っていた。  襖から飛び出て、レイプに興じていた兵隊の首を背後から掻っ切る。 「よくもあたしのパパとママをーっ!  なんちって……あたしの元に冒険を運んできてくれて、ありがとうね……本当に、うれしかった」  そんなことを伏し目がちにささやく。  そして死んだ兵隊から銃を奪い、トロフィーのように高く掲げる。 「やったやったやったやったやったやったやったやったーーーーーあああああんんんんん!  嬉しい、嬉しい、嬉しすぎるううううう、、銃、銃、銃ゲットだああああああああああ  ひゃっほおおおおおおおおおおおおい」  騒ぎを聞きつけて引き返してきたもう一人の兵隊も、部屋に入ってきた瞬間、 隠れていた横からさくっと射殺。  自分が強いのがうれしくて、両親2+兵隊2の4つの死体のある部屋で、感極まって踊り出す。 「るったったー、るったったー、ちゃらりららーんん!」 ☆ 「ほら、ほら、がんばるんだよ! あきらめないんだよ!」 「あのね、諦めたら笑えないの。絶望したら笑えないの。がんばるんだよ。  くじけないんだよ。そうすればずっとずっと、負けないんだよ。  雨が降っても雪が降っても、爆弾が降ってきても世界がもうすぐ終わっちゃっても、  親兄弟が殺されても恋人に捨てられても、親友に裏切られても手足が全部なくなっても、  巨額の借金背負っても拉致監禁されて輪姦されても拷問されても、  ぜったい絶対絶対、あきらめないんだよ。狂気にも逃げない、狂わないんだよ。壊れないんだよ。踏ん張るんだよ。  どんな悲しいことがあっても、どんなにつらい状況でも、ずっとずっと笑顔でいるんだよ。笑っているんだよ」 「うん、たまにはね、疲れることもあるんだろうね。力尽きることもあるんだろうね。  そう、心の力は確かに無限じゃない。でもね。あのね。そのね。  意外なことに、人生も無限じゃないよ。いつか必ず死ぬときは来るよ。  だから、せめて最後に死ぬそのときまで、命の炎の尽きるその瞬間まで、保たすの。  粘るの。頑張り続けるの。戦い続けるの。愛し続けるの。信頼し続けるの。  笑い続けるの。……そう、死ぬまで毎日健康ポジティブ、オーー!」 ☆  殺し合いを楽しみたいのに、ぜんぜんピンチにならなくて楽しめない空。  相手の死体ばかりが増えていく。 「もう、命かかってるってまだわからないの!? まじめにやってよ!  あんたたちにとって、そんなに命って守る価値がないの!?  あたしだけ本気であんたたちばーっかりバタバタ死んでって、これじゃああたしがバカみたいじゃない!!」 「そんな……そんな不意打ち……そんな単純な不意打ちで……  あたしの警戒を突破できる訳ないでしょおおおおおお!? まじめに頭使いなさいよ!!」 「ああ、もう……本当、信じてたのに……あなたのこと、せっかく、折角折角、  いままでずーっと信じてたのに……ここまであなた、頑張ってきたのに、  このタイミングで裏切ったら、あたし、防御しきれるに決まってるじゃない!!  どうしてもっと粘らなかったの!?  うん、分かるよ、目の前でこの子があたしに殺されるのが耐えられなかったんだよね?  どうしても、見捨てられなかったんだよね?  でもそれなら尚のこと、あなたは冷静さを失うべきじゃなかったのよ!  そおんな正面からの激ツマンネエ攻撃で、あたしに一撃できる訳ないじゃないバカ!   ら結局あなたがあたしの信用を捨てた甲斐もなく、この子死んじゃうよ?  はい死んだ。そしたらほら、どっちにしろこの子死んだ訳だから、せめてあたしに復讐するためにも、  あたしという、あなたにとって悪夢のような存在を葬るためにも、あなたはここで我慢すべきだったのよ!  一時的にだけでも、自分の命を大切にすべきだったのよ!  反吐が出そうになる自分の心を押さえつけて、へらへら殺すあたしに同調するフリをして、  平気な顔して、楽しいねー、僕たち心が通じ合ってるねーって顔をすべきだったのよ!!  そんで、待ってたら絶対チャンスがくるから、いかに最強のあたしでも、  いかに注意深さの覇王のあたしでも、あたしが本気で信頼してたあなたになら、  絶対あたしが隙を見せる一瞬があるはずなんだから、その時をじっ…………………………  …………………………………………………………………………………………………………  ………………………………と待ち続ける、それが、それだけが、あなたがあたしを殺す唯一の手段だったのに!  ほんと勿体ない! 惜しいにもほどがある!  もう……裏切るのはいいけどさ、せっかく裏切ってこのザマってのは……  悪いけど、ガッカリしちゃったと……言わざるを得ないよ、もう」 「ああーあ、敵がいない……敵がいない……もう、冒険がない……」 「退屈だな……」 「う……」 「うえええええええんんんんん……誰も……」 「誰も、あたしに最後まで付き合ってなんか、くれないんだ……」 「みんな、すぐ、すーぐ、ちょっとした障害だけであきらめて……」 「あっさり死んでいくんだ……あたしを見捨てて……」 「うええええん……」 「……」 「……」 「……」 「……」 「……」 「……」 「さみしいよお……」 つづかぬ ----------------------------------------------------------------------