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ステッパーズ・ストップ

そのほか

2012年


孤絶防壁都市エルダ02


<14>
 しばらく歩くと牧草地が終わり、代わりに農地が広がっていた。農夫たちが土に桑を入れている。特に見るべきものは無い。あなたは街まで引き返す。
 ⇒<6>

<15>
 街の門はトンネル状になっており、入り口と出口それぞれで衛兵が見張っている。羊車の陰に隠れられても、全く見られないという訳にはいかない。
 3、2、1、とあなたはカウントして衛兵の意識振動の周期をくぐり、うまく街中に入り込んだ。
 ⇒<17>

<16>
 枝葉の茂みの中に入り込み、あなたはじっとうずくまる。ほどなくして車がガタゴトと揺れる。落ち着く振動だ。葉っぱの隙間から外界を見る。車の移動に伴って景色が移ろっていく。何もせずとも状況が自分の望むように推移していくのは気分が良かった。
 車は西門を通過し、衛兵の監視に咎められることもなく、あなたは木材と共に街に運ばれる。
 ⇒<18>

<17>
 あなたは東西を横切る大通りにいる。ここは東通りである。道は東の大壁に突き当たり、街の外に出る門に続いている。門から出入りする羊車は通りの北側の資材置き場を行き来する。この門から街の外に出る分には衛兵の監視も緩く、咎められることも無いだろう。西は街の中心へと続いており、空高く伸びる時計塔も見える。
・東の門から街の外へ ⇒<4>
・通りを西に進む ⇒<19>

<18>
 あなたは東西を横切る大通りにいる。ここは西通りである。道は西の大壁に突き当たり、街の外に出る門に続いている。門から出入りする羊車は通りの北側の資材置き場を行き来する。この門から街の外に出る分には衛兵の監視も緩く、咎められることも無いだろう。東は街の中心へと続いており、空高く伸びる時計塔も見える。また、通りの南側の住宅地にはちょうど良い高さの塀が、あなたに登らせたくなるように誘惑している。
・西の門から街の外へ ⇒<5>
・通りを東に進む ⇒<19>
・塀を登ってみる ⇒<32>

<19>
 あなたは街の中心地である交差点にいる。交差点の中心には領主の銅像が権威を知らしめるべくそびえ立っている。北西の角は人々がくつろぐ広場となっており、一角に大きな時計塔が立っている。広場にはまばらに人が見える。
 ここから、あなたはどこに移動しても良い。
・銅像を観察する ⇒<20>
・通りを東に進む ⇒<17>
・通りを西に進む ⇒<18>
・通りを北に進む ⇒★
・通りを南に進む ⇒★
・広場に移動する ⇒<21>

<20>
 銅像の台座には『未来を見据えるレヴァース・シルベルト』と銘打たれている。像と説明文から読みとれるところでは、賢く機知に富んだ立派な人物であるそうだ。それがどこまで本当かは街を見れば判断できるだろう。あなたは街に目を向ける。
・通りを東に進む ⇒<17>
・通りを西に進む ⇒<18>
・通りを北に進む ⇒★
・通りを南に進む ⇒★
・広場に移動する ⇒<21>

<21>
 広場は等間隔に配置された植林鉢に囲まれた公園だった。周期的に活動する噴水を中心に、ベンチ代わりのオブジェクトが規則正しく並べられている。何組かのカップルや家族たちがくつろいでいた。浮浪者もいる。広場の外れには、大きな白い時計塔がある。
・カップルの一組に近づく ⇒<22>
・家族の一組に近づく ⇒<23>
・浮浪者の一人に近づく ⇒<24>
・時計塔に近づく ⇒<27>
・広場を出る ⇒<19>

<22>
 直方体のオブジェに座るカップルは互いの陸言に夢中であなたに気づかない。二人は物理距離を必要以上に近接させておりかつそれを楽しんでいる。女は髪を一房赤いリボンで結んでいる。頬を赤らめ、男の視線と言葉から自分の価値を確かめている。男は「あの……今日は本当にありがとねあ、いやっ来てくれたこともそうなんだけど、なんか、今日はすごく可愛くなっててびっくりしてあ、いやいつも可愛いとは思ってたんだけどあ、でもそんなじろじろ見てた訳じゃないんだけど前からすごい気になっててグループディスカッションしたの覚えてる? あの時とか同じグループになったときなんかもう内心どきどきで、先週誘ったときも実はすげー緊張してて今日会えるってずっとわくわくしながら不安にもなってて、で今朝会ったらレオナさんめちゃくちゃ可愛いことになっててああまずいな、ああぶち抜かれちゃった心臓を、とか思ってていやなんていうかそのっ……そのリボンえっとあのそのリボン似合ってます」などと女を喜ばせるための法螺を吹きまくっている。
 かと思えば女も「やだなあ君さっきから一連の言動が気持ち悪すぎるよやだやだ本当やだやめてよ」と言葉とは裏腹にさも嬉しそうに笑うことで自分が誉められていかに男の言葉に喜んでいるかを伝えながらも男の下心と欺瞞を見抜いた上でしかし誉められることそのものの直接的な快楽と嘘を嘘と見抜きつつ泳がせたままにするコミュニケーションの妙を楽しんでいる。
 さらに男もまた男で「ごめん、本当おれ気持ち悪いよねいやでもこれは割とレオナさんが悪いと思うよだってレオナさんがもう少し手加減っていうか魅力を下げててくれればおれもこんな気持ち悪いことにならなかった訳だし」と嘘がばれているのは承知で口説き文句を重ね、女の冷ややかでシビアな眼差しも感じつつ見抜かれている下心は逆に表面的には隠す素振りを見せつつその実露骨に示すことで性的なアピールにかこつけたその行為自体で自分の欲情を相手の意識に触れさせる欲望を成就させている。
 その一方で女はもちろん「それ口説いてるのかな口説いてるよねあのね回りくどいよきみはあんまりシャイすぎるから教えてあげるけどねあのね人口説くときは人の目を見てだから目を見てはいこっち見るいいかな人口説きたいんだったら踏み込むときは思い切って踏み込まないと相手を感激させられないよあのねそう感激だよそういう非日常に相手を連れくのが口説くってことだよだからニュートラルギアのままじゃだめなの分かるかなかと言って頑張りすぎてテンパられても興ざめだけどねじゃあちょっと練習してみああ言っておくけど今日はきみの練習台になってあげる代わりに何言われてもノーカンだからね」と男の欲望に対する受諾と拒絶の最終決定権が自分にあるという圧倒的有利な状態がもたらす愉悦を脳の奥で味わいつつこれをたやすく終わらせず長引かせるための心構えを作っている。
 両者とも四段以上の意識階層を作った上で相手のそれを探りながら少しずつカードを切っていく高次のメタゲームを展開しつつそれに伴う刺激を楽しんでいる。
 総合的に評価すると、この二人は結局のところそれなりにデートをうまくやっていると言える。
 うんざりしたければしても良い。あなたは二人から離れる。
 ⇒<21>

<23>
 三人家族が幸せを絵に描いている。仲睦まじい夫婦が羊車を模したオブジェに並んで座り、娘が優雅に踊るのを見守っている。黒いスカートの裾が、娘の動きに合わせてゆったりと弧を描いていた。お姫様みたいだね、と両親は我が子を誉めている。子供はぴたりと回転を止め、スカートの縁をつまんで礼をする。あなたはこの子供の視界に入っているはずだが、彼女は気づいたそぶりを見せなかった。演舞に集中しているのかも知れない。あるいは、気づいているがそう見せていないかだ。
 その後彼女は子供らしい移り気を起こした。
「ねーねーお父さんお母さん、時計塔見てきていーいー?」
 娘は両親の許可を取ると、さきほどの優雅さとは打って変わって粗雑な動きで、時計塔の方に駆けていった。
・家族から離れる ⇒<21>
・娘を追って時計塔へ ⇒<31>

<24>
 世を捨てたにしてはまだ若い、二十代後半の男が亀のオブジェの背に座ってうなだれている。整備されたこの街にあって身なりは極端に汚く、体も衣服も何日も洗っていないことが伺い知れた。自由の身を謳歌しているようには見えない。疲弊している。彼はあなたに気づいた。目が合ってあなたは震えを感じる。男はしゃがんで手を広げた。
「チッチッチッチッチッチッ、おいで。おいで。ご飯あげるよ」
 心に余裕がある者の戯れではない。血走った目は必死に嘆願している。
「ねえおいでよ、寂しいんだよ」
 哀れみを誘う口調で言う。孤独に打ちのめされているのは嘘ではない。しかし同時にむせ返るような暴力的衝動の匂いも感じた。あなたは男の気持ちが分かる。コイツハオレヨリヨワイ。
・それでも近づいてみる ⇒<26>
・やめておく ⇒<25>

<25>
 それに近づいたら何をされるか分からない。あなたは男から離れる。背後から男が舌打ちするのが聞こえた。あなたは申し訳なく思う。少なくとも今は彼を救ってやることは出来ない。
 ⇒<21>

<26>
 近づいたあなたは男に捕まえられた。
「きはあああああああああああああああっ ネコちゃんだなああああああ」
 突然天地が目まぐるしく入れ替わる。尻尾を掴まれて振り回されているのだ。
「だあああああああああん!」
 突き刺すような衝撃が全身を襲う。想いっきり地面に叩きつけられたのだ。酷い目に遭った。こうなることは分かっていた。あなたはネコに対して申し訳なく思う。
 処理速度を一時的にブーストする。平衡感覚を瞬時に取り戻し、あなたはほうほうの体で男から離れた。背後からケタケタ笑う声が聞こえる。
「ざまあああああみろ! どいつもこいつもオレを馬鹿にしやがって、ええおい、働けねえからどうしたっつうんだよ! オレが何したっつうんだよ! お前らがオレを責めるならよ、ええおい、オレにだってお前らを責める権利はあるよなあああ? オレが弱いのをいいことにさんざんぶっ叩きやがってよ、そしたらオレだってお前ら社会の弱いところをぶっ叩いて当然だよなああああ? ……あー、つまんね」
 あなたには分かっていた。人間は、ダメージを負いすぎると腐敗してしまうのだ。地獄の底、ストレスの渦中でも自尊心を保てる者はいるが、残念ながら誰もがという訳にはいかない。今あなたが彼にしてやれることは無い。仮に何か与えても貪欲に飲み干すだけだろう。
 ⇒<21>

<27>
 街の全域から見える、大きな時計塔のふもとにあなたは来た。塔の壁は積み上げられた白い石で出来ており、紫色の紋様のようなものが刻まれている。ぐるりと回っても入り口はなく、代わりに外壁を螺旋して這う階段が備え付けられている。紋様もその階段と並行して螺旋し、階段を上ることでその移ろいを鑑賞することが出来るようになっているようである。階段を七回りすれば上にある扉に辿り着けるようだが、階段の入り口は隙間の無い扉があり固く施錠されていた。そして近くにカウンター状の出窓のついた小屋があり、男が暇そうに煙草を吹かしている。彼が階段の錠を管理する門番なのだろう。
・紋様を観察する ⇒<28>
・門番に近づく ⇒<29>
・階段を上る ⇒<30>
・塔から離れる ⇒<21>

<28>
 紋様は単調な幾何学パターンのようでもあったが、よく観察すると規則性と不規則性が混合している。つまり、意味のある言語情報であろうことが見て取れる。模様が平面的に展開されており、象形文字というよりは回路図に近いようだ。
 しかしこの地面からだと紋様の一部しか見えない。読み解くには情報があまりにも足りなかった。
 ⇒<27>

<29>
 門番はあなたが近づいても何も反応しない。声をかけても、こちらを一瞥するだけでその後はずっと無視された。そんなものだろう。
 ⇒<27>

<30>
 階段の入り口は扉で密閉されており、入り込む隙間も無さそうである。残念ながら、誰かにここを開けてもらわないことには階段を上ることは出来そうにない。
 ⇒<27>

<31>
 娘は時計塔の前に立ち、上を見上げていた。塔の周囲には螺旋階段が巻きついているが、階段の入り口は施錠された扉があり中に入ることは出来ない。
「鍵が……ないとだめだー」
 しばらくすると娘は時計塔を見るのに飽きて、両親の元へと舞い戻った。
 ⇒<21>

<32>
 住宅街の北、つまり西通りに面する塀の上にあなたは座っている。塀を伝えば住宅街を好きに移動できる。西通り沿いに東に伝えば、交差点で折れ曲がって南通り沿いを行くことになる。
・西通りに飛び下りる ⇒<18>
・塀を伝って南通り沿いへ ⇒★
・塀を伝って住宅街に入り込む ⇒★

 


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