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ステッパーズ・ストップ

そのほか

2012年


くもり高校生02


くもり高校生。2



【24。】

「それじゃ続きを始めるね」

 くもりは正座を崩した形で座って、「RPG」のノートをふたたび開く。

「山に籠もった女神様が、特に愛した人間たちの種族がいました。その種族の耳は猫のようになっていて、どれだけ離れた場所にいようとも、女神様の声が聞こえるようになっていました。その種族の名前はキャティと言いました。キャティは物静かな性格で、山奥で女神様とともに幸せに暮らしていました。そして……それで……」

 音読の途中で、またくもりの口が止まる。彼女はため息をついた。

「はーっ、読むのだるいな……いいや、ちょっと自分でこれ読んで。今ここで……ここから……ここまでね。ここまでだけ読んで。その先は読んじゃだめだよ。ページもめくっちゃだめだよ」

 開いたノートをくもりに手渡され、あなたはRPGのプロローグを自分で読むことになった。

【25。】

 あなたはノートに目を走らせる。

『キャティは物しずかな性格で、山おくで女神さまとともに辛せにくらしていました。きみはキャティの村に生まれた少年です。ゆたかな白然にかこまれた村で、きみは家族といっしょに辛せにくらしていましたが、ある日、となりの国の軍たいがやってきて、邪悪な女神に仕える悪まだと言って、この村をおそい、焼き払ってしまいました。両親はきみとペットのニャオを一人ボートに乗せて逃しました。きみは川に流されて山を下り、どんどんこきょうの村をはなれていきました。きみが流されるまま、海まで出てきてしまったところに、漁師のじいさんのボートが通りかかりました。入り江に住むカジキと戦おうとしていたじいさんは、きみを見てたいへんおどろきました。「悪まがボートに乗ってきた!」けど子供で困っているきみをかわいそうに思って、きみを白分のボートにのせて、家まで連れて行ってくれました。町に出ていった子供が会いに来てくれなくてずっとさみしかったじいさんは、きみを家においてくれました。きみはじいさんにもらった巻き布で耳をかくして、じいさんの家でくらすことにしました。しかしきみはずっと、こきょうの村が心配でした。町で言われているうわさによると、キャティたちはほりょとして軍たいに捕らえられているそうです。きみはキャティたちを助けに行きたいと思いました。そのことをじいさんに言うと、じいさんは危ないと言って反対しましたが、きみが一ずに思うので、分かったと言いました。そして、あまり足しにはならないかも知れないがこれを持って行けと言って、究の子の金貨20枚と、古いけどしっかりとした作りの剣をくれました。この剣はじいさんが戦争に行ったときに使っていた剣です。きみはじいさんに、いろいろお世話になったお礼を言って、ニャオと一緒にじいさんの家を出ていきました。さあ冒険のはじまりです!』

 と、そこには、きみがノートを渡されなければ目にすることも無かったであろう、猫の顔が描かれていた。雑な落書きであったが、毛並みのやわらかさがよく表現された、好ましい感じのイラストだった。

【26。】

 そこまで読んだところで、丁度くもりが口をはさんできた。

「ねえ読み終わった? 猫の顔のところまでだよ?」

・「読み終わった」と言ってノートを返す→27
・「まだ」と嘘をついてさらに先も盗み見る→28

【27。】

 くもりはノートを受け取り、今度はゲームシステムの説明を始めた。

「きみはこのキャテイの少年になって、仲間を助ける旅に出るのね。職業は勇者で、レベルは1。武器はロングソードを持ってて、お金は金貨50枚を持ってます」

 これらのデータはくもりが管理してくれるので、あなたはあまり気にしなくていい。もっとも、さっきは20枚と言っていた金貨の枚数はいつの間にか増えているくらいなので、彼女の管理はかなり杜撰そうだが。

「そんで、魔法は……ちょっと待ってね。あったあったこれだ。レベルが上がると覚えていくんだよ」

 彼女はノートをめくって、あるページをあなたに見せてくれた。それは、あなたが覚えていくらしい魔法のリストだった。以下にその記載内容を示すが、読者であるあなたはこれについても、内容を覚えたりはしなくていいし、修得レベルや消費MPなども気にしなくていい。興味の範囲で眺めてくれれば結構だ。


<レベル1>
ファイア(M2):炎ぞく性で10ダメージ
ナオール(M3):HP20回ふく

<レベル3>
テレポワ(M5):行ったことのある町にワープする

<レベル5>
ファイラー(M4):炎ぞく性で30ダメージ
ナオーラー(M6):HP40回ふく

<レベル10>
ファイレスト(M6):炎ぞく性で60ダメージ
ナオーレスト(M9):HP全回ふく

<レベル15>
ナクスデス(M10):死んだ仲間を生き返らせる

<レベル20>
ギガドーン(M12):雷ぞく性で200ダメージ

<レベル25>
ギガブレード(M8):雷ぞく性の剣で250ダメージ

<レベル30>
IDEA(M??):????????????


「最初はレベル1だから、ファイアとナオールが使えるよ。あ、MPは最初は10だから」

 用意されている魔法の半分ほどは攻撃魔法ばかりらしい。最後の「IDEA」という魔法だけは、効果が伏せられていて何の魔法か分からない。

・「IDEA」が何なのか聞いてみる→29
・特に触れないでおく→30

【28。】

 プロローグの後には、下記のように主人公のスペックが記載されていた。


〜主人公〜
キャティの少年
職業:勇者
レベル:1
武器:ロングソード(5)
防具:服(1)
魔法:ファイア、ナオール
HP:30
MP:10
功げき力:6
坊ぎょ力:2
素早さ:5
ま法功げき力:2
ま法坊ぎょ力:2
理力:7


 そこでページが切れていたので、あなたは先を見るためにめくろうとしたが、くもりにノートを取り上げられてしまった。

「まったく油断も隙もないんだから!」

→27

【29。】

 あなたがIDEAについて質問すると、くもりはきょとんとした顔をする。

「え? イデア? 何が? そんなのないよ?」

 あなたがノートのその箇所を指し示すと、くもりは首を傾げた。

「あれ、ほんとだ。こんなのがある。あれ? わたしこんなの書いてないと思うんだけどなあ」

 とぼけているのだろうか。どちらにせよ、くもりからこのIDEAという魔法について聞き出すことは出来ないようだった。

【30。】

 くもりが説明を続ける。

「わたしが状況を言うから、きみはどうするのかを言ってってね。宿屋に行く、とか、戦う、とか、そういうのね。魔法とかも使うときは自分で言ってね。分からないことがあったら聞いてもいいよ」

 つまり普通のコンピュータRPGで言うところの、モニターがやるはずの状況描写をくもりが口頭で行い、プレイヤーがコントローラで入力するコマンドを、あなたが口頭で行うということらしい。会話によって成り立つRPGなのだ。まずあなたが連想したのはごっこ遊びだったが、似たような別の遊びがあるのを聞いたことがあった気もする。

 くもりが湯呑みを取って、お茶をずずずいっと飲んだ。

・あなたもお茶を飲む→31
・飲まない→32

【31。】

 口元に湯呑みを近づけると、香ばしい香りが鼻を撫でた。ほうじ茶だ。

 あたなはくもりに倣ってお茶をすする。少し冷めていた。無言でお茶を飲みながら、くもりはあなたを見ていた。あなたもつられてくもりを見る。三秒ほど目が合い、くもりの方が目をそらした。

「うん。おいしっ」

【32。】

 上からブーンと小さなモーターのような音がして、あなたは天井を見上げた。虫が飛んでいる。

「なんだ。ハエだ」

 くもりの言うとおり、ハエだった。あなたの背後の窓を開け放しにしていたため、入ってきてしまったのだ。小うるさい音を放ちながら、くもりの頭に降りようとする。

「あーもう、なんでこっちくるんだよ!」

 手を振って追い払うが、ハエはめげずに何度もしつこく降りてこようとしていた。

「うるっさいなあ。ハエってなんでこううるさいんだろうね。ああもう!」

 ハエがちゃぶ台の縁に止まったところを、くもりがバシンと素早く叩いた。素手ではなく、彼女が手にしていたノートを丸めたもので、だ。その一撃はクリーンヒットしたらしい。アメリカのマンガキャラみたいにつぶれたハエが、「RPG」ノートの裏表紙にプリントされてしまった。

「あーあなんだこれ。汚れちゃったよ。あれ、ティッシュどこだティッシュ」

 あなたはテレビの上に積まれたがらくたの中に潰れたティッシュ箱があるのを見つけたので、自分の家の備品を見つけられないくもりに教えてあげた。しかしながら、くもりはがらくたの山からティッシュ箱だけを抜き取ろうとしたが失敗してしまう。ティッシュ箱に引っかかって上に積まれていた電気コードやら古い文学雑誌やら熊の木彫りやらがどさどさと畳に落ちた。

「これだよ」

 くもりが溜め息をつく。迂闊な選択をしたという反省はないらしい。しかも元通りに積み直すこともせず、落ちたがらくたたちを足でズザッとテレビ台の方に寄せて、「これでよし」と言った。戦利品の潰れたティッシュ箱からティッシュを抜き取り、ノートについたハエを拭く。それも二、三度雑に擦ることしかせず、拭き損ねた汚れが、むしろバターのように表面に伸ばされたのも気にしていなかった。

【33。】

「そんでね」

 くもりがRPGを再開する。

「きみはじいさんの家を出て、クアートっていう町に来たよ。噂によるとね、捕まったキャティたちはこの町の牢屋にいるらしいんだ。牢屋は、けやき通りをずっと進んだ突き当たりにあるよ。どうする?」

・牢屋を目指してけやき通りを行く→34
・それ以外の場所へ→35

【34。】

「ニャオと一緒に通りの方に向かおうとしたとき、きみは声をかけられたよ。近くの人じゃなくって、山にこもっているはずの女神様から話しかけられたんだ。あ、女神様の名前はシェーラって言うから覚えておいてね。で、シェーラ様は言ったの。『わたしのかわいい猫たち。牢屋に捕らえられたかわいそうな猫たち。あなたたちの仲間が助けに行きますから、それを信じて待っててくださいね』って。きみは頼られてるんだ。シェーラ様は、きみにも声をかけたよ。『みんなを助ける決心をしてくれたあなた。つらい戦いになると思いますが、決してあきらめずに頑張ってくださいね。わたしのかわいい猫たち、わたしはいつもあなたたちを見守っておりますよ』って。そんで声はやんだよ」

→36

【35。】

「それ以外の場所? 特に何もないよ。関係ない家とかしかない」

・関係ない家に入る→37
・おとなしくけやき通りへ→34

【36。】

「けやき通りを歩いてるとね、途中でパン屋があったよ。レンガで出来てて、煙突からもくもく煙が出てる」

・パン屋に行く→38
・寄り道せず先へ→39

【37。】

「だーめだよ。入れない。何もないよ」

 非常識な行動は許してくれないらしい。あなたは変な行動をいろいろ取ろうとしたがすべて却下され、けやき通りを行くしかないようだった。

→36

【38。】

 あなたはパン屋に入ることにした。

「中ではエプロンをつけた太っちょのおばさんが三人いて、でかい手袋をつけて忙しくパンを焼いてた。売場の棚を見たら、コロネとかベーコンエピとかがいろいろ並んでた。パン1個は金貨1枚で買えるよ。どうする?」

・パンを1個買う→40
・パンを50個買う→41
・店を出て先に進む→42

【39。】

「けやき通りを歩いてたら、パン屋の次は……えーっと、そうだ宿屋があったよ」

・泊まる→43
・寄らずに先へ→44

【40。】

 あなたはパンを1個買うことにした。

「パン1個ね。金貨1枚になります。まいどあり!」

 くもりは、電話機が置かれた棚の上にあったボールペンで、ノートの余白に『パン』と、金貨の所持枚数である50を棒線で打ち消してその横に49と書いた。

→42

【41。】

 限度一杯までパンを買おうとしたら、くもりに怒られてしまった。

「ちょっと! そんなにパンばっか要る訳ないでしょ。食べきれないで腐っちゃうよ。まじめにやってよね」

 牢屋にいる仲間のために持っていくんだ、とか言ってもくもりは聞いてくれない。

「ふざけるのは無し。いきなりおじさんが大量にパンを買って1個を残して売り切れましたー。だから買うなら1個まで!」

 世界の創造主の特権で、選択肢が強制的に絞られてしまった。

・1個だけ買う→40
・買わない→42

【42。】
パン屋出る

【43。】
宿屋へ

【44。】
けやき通りの先へ



つづく


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