-------------------------------------------------------------------------------- 戦闘開始 -------------------------------------------------------------------------------- 美登理 :5/0/0/5/黙祷剣、黙祷剣、残響剣、星霜剣 神科 戯華:5/0/0/4/デス剣、黙祷剣、黙祷剣、残響剣、星霜剣 -------------------------------------------------------------------------------- 処理 -------------------------------------------------------------------------------- 黙祷剣。MPが3ポイント増える。 黙祷剣。MPが3ポイント増える。 残響剣。MPを5ポイント消費し、自分自身をビルドする。 生成された自分はふたたび黙祷剣・黙祷剣・残響剣を執行し、自分自身をビルドしようとする。 しかしそれは無理な話。 自己生成の無限ループを回避するために、ビルドされた者は、そのターン内はビルドを行えない。 だがこの後がミソだ。 星霜剣。MPを1ポイント消費し、ターンをひとつ推し進める。ビルド制限は失せる。 ターンは終わりと始まりを経由せずにただ「進む」のだ。 これによってターン終了を待たない自己生成が可能になる。 生成された自己もまた、同じことを繰り返す。 黙祷剣、黙祷剣、残響剣、星霜剣。 自己生成の禁を外し、敵に息継ぎを許さぬまま一瞬ですべてを終わらせる。 この、圧倒的な君臨を許す、人の手に下った運命の如き構成を、こう呼ぶ。 「キング・クリムゾン――」 神科戯華。血塗れの王を名乗る。 「星よ、巡れ――」 体が浮上する。 地中から屍山が沸き、彼女の体を押し上げているのだ。 「あまねく生命に定められた、死まで――」 血河のカーペットが広がり、敵までの道程を導く。彼女はその上をゆっくりと歩く。 「時を、運べ!」 掌中に握られた紅い≪死≫を。 とても小さな、しかし人の生命を絶つには十分なそのナイフを。 何もできず、己が身に何が起こっているかも理解できない凡夫の脾腹に、そっと差し込む。 キング・クリムゾン・デス・カーペット。 死への道。 かつて夢見られた速攻デス剣。 死を早めるのではなく、時計の針に手をかけて、死の訪れる瞬間まで進めることでそれを実現する。 それが、神科戯華の必殺の構成だった。 「キング・クリムゾン・デス・カーペット――死に、屈服しろ!」 相手は死ぬ。 誰も抗えない。 避けることも出来ない。 死や、時間という暴虐から逃れられる者などいるはずがない。 ---------------------------------------- 結果 ---------------------------------------- 勝利者:神科 戯華 ---------------------------------------- だが。 「クソ虫が……」 カラン ――ナイフが落ちる。 「キング……クリムゾン……だって?」 カランカランカランカランカランカラン ――生成された神科戯華たちが、次々と落としていく。 「これが? この出来損ないが? これがキングクリムゾン?」 カランカランカランカランカラン ――不可解。 「死と混ぜたのは、面白い工夫だけど……」 カランカランカランカラン ――減ってゆく。「落ちたナイフの数」ではなく―― 「しょせんは凡夫の浅知恵。終端には届かない……」 カランカランカラン ――「ナイフが落ちた数」が減っていく。 「王を名乗ることなど、誰にも、許されない」 カランカラン ――ナイフを落とした、神科戯華の数が減っていく。 「この、私以外は」 カラン ――神科戯華が、ただ一人に戻る。 キング・クリムゾン・デス・カーペットが、『なかったことになった』。 その発生が、その実行そのものが棄却されたのだ。 何も起こらなかった。 何もできなかった。 すべては無かったこと。 「思い知ればいい。これが、唯一にして真の……」 あったことを、無かったことにする。 現象の棄却、それを可能にする構成は―― 「キング・クリムゾンだッ!」 黙祷剣。夜空に広がるおびただしい虚無の、その圧倒的な沈黙。 黙祷剣。幾億年にも渡る無為なる歴史の、大いなる静寂。 残響剣。現在の自分という存在が原因となり、現在の次の瞬間にその存在がエコーする。時の本質。 生成された【自分】はふたたび黙祷剣・黙祷剣・残響剣を執行し、自分自身をビルドしようとする。 しかしそれは【無理】な話。 自己生成の無限ループを回避するために、ビルドされた者は、そのターン内はビルドを【行えない】。 だが【この後】がミソだ。 星霜剣。月が巡るも星が巡るも、掌中に掴めば時を制する。 ターンは終わりと始まりを【経由】せずにただ「進む」のだ。 これによってターン終了を待たない自己生成が可能になる。 生成された自己もまた、同じことを【繰り返す】。 黙祷剣、黙祷剣、残響剣、星霜剣。 自己生成の禁を外し、敵に息継ぎを許さぬまま一瞬で【すべて】を終わらせる。 この、圧倒的な君臨を許す、人の手に下った【運命】の如き構成を、こう呼ぶ。 「キング・クリムゾン――」 それは、攻撃ではない。 戦いですらない。 神科戯華は膝を突く。 彼女は攻撃などされていない。 ダメージも受けていない。 王は手をかざす。人心をも握りつぶせる、手を。 そしてただ命じるのみ。 「道を、開けろ」 それだけで終わる。 神科戯華の行為も抵抗も関係ない。ただ敗北という結果だけが訪れる。 神科戯華は倒れる。 その上を、もはや意識すらせずに美登理が踏み越える。 彼女の瞳は恐ろしく冷えている。 -------------------------------------------------------------------------------- 結果 -------------------------------------------------------------------------------- 勝利者:美登理 --------------------------------------------------------------------------------