-------------------------------------------------------------------------------- 戦闘開始 -------------------------------------------------------------------------------- 空山 海 :10/0/0/3/詠唱剣、泡溢剣、加速剣、加熱剣、舞踏剣 倉石 スー: 5/3/0/2/破壊剣、先行剣、破壊剣、剣戟剣 -------------------------------------------------------------------------------- 処理 -------------------------------------------------------------------------------- 「こんにちは海くん。海くんの相手は私だよ。  お手柔らかによろしくね。こっちは手加減しないけどね。  あのね、悪いけど今日は私、海くんと勝負なんてする気はないから。  どっちが勝つか力比べ、じゃなくて私がただひたすら海くんをボコすだけから。  私が、海くんを、一方的にね。  勝負なんてやってみないと分からないって? なるほどお利口だね海くんは。  でもね。  そういうくだらない話をしてるんじゃないの。  そういう意味のない話をしてるんじゃないの。  私はね、海くん、あなたが気に入らないの。あなたが嫌いなの。  見てると腹が立ってくるの。見てなくてもイライラしてくるの。  だから嬲るの。だからいじめるの。  ん? なに意外そうな顔してるの?  まあ人気者だもんね、海くんは。男にも女にも好かれてるもんね。  自分が誰かに嫌われてるかも知れないなんて考えたこともないんだろうね。  傲慢すぎて反吐が出る。そういうところが嫌いなのよ。  違った。  そういうところ『も』嫌いだったんだった。  あのね、海くん。  自分じゃ気づかないんだろうけどあなたは嫌なとこいっぱいあるんだよ。  まずその見え透いた幼稚なキャラ作りを最初に見た瞬間に殴りたくなったでしょ。  『キョトン』とかふつう口で言う? 『てへっ』とか本当に使ったりする?  そんな漫画みたいな言い回しを実際に口にしたときの違和感が分からないのかな。  何なのあれ。  まわりの優しい人に『かわいい』って言ってもらいたい意図がバレバレだよ。  見てるこっちが恥ずかしくなるくらい。  それに加えてそのコスプレ。何それ。  あんまりだよね?  有り得ないよね?  何がって?  ああ、やっぱり海くんは言ってもらわないと分からないんだね。  本当は分かってるくせに。  あのね、海くん。  男の子がそういう女みたいな格好するな、なんてことは言わないよ。  話を男女差別に持っていって『倉石が女装を不当に否定した』なんて変に被害者ヅラされても  うるさいからあらかじめ釘を刺しておくけどそういうことじゃないの。  あのね、海くん。  あなたたち男子が共犯でやってる、海くんのエセ女キャンペーンが迷惑なの。  わざとらしく女らしさランキングなんてやって海くんをトップに置いたりさ、  ちょっと女子から文句言われると『男子って凶暴ねー』とか言ってきたりさ。  そりゃ海くんみたいのがいたらそんなつまんない冗談も言いたくなるんだろうけど、  毎日毎日しつこく言われるとさすがにストレス溜まってくるんだよね。  それでこっちがイライラし始めたのをまた刺激する悪循環でしょ。  まさかあれ、海くんは自分が関係ないって思ってるってことはないよね?  確かにあなたは自分の手は汚してなかったけど、でも事態の中心にいたんだよ?  その上で全然やめさせようとしなかったよね。  面白がって傍観してたよね?  まんざらでもなさそうにさ。  幼稚な悪ふざけをしつこく繰り返す男子らもうざいけどさ。  あんたみたいに部外者ぶってるくせにちゃっぱり楽しんでるやつが一番むかつくんだよね。  ちゃっぱりだって。噛んじゃった。  あれ? だんまり? シカト?  まあこれだけキャラを腐されたらね。  いつもみたく無邪気に、周りの迷惑も考えずにはしゃぐなんてできないだろうけどさ。  それでもシカトまですることはないよね。  わたしの言葉に対してさ、それか、これだけ露骨に悪意をぶつけてくるわたしに対してさ、  言うことって何ひとつも無いわけ?  しょうがない人間だね、海くんは。  本当にしょうがないよね、海くんは。  他人から認知されたキャラを被らなきゃ自分の言葉を言うことも出来なくなるんだね。  よく覚えておくといいよ、海くん。  その薄っぺらさがあなたなんだから。  コスプレ一枚剥いだ下に何も残らないのが海くんなんだから。  これだけ言われて無反論。  あれでしょ? もう待ってるだけなんでしょ?  ずっとこっちの話が終わるのをさ。  ずっとこの試合が終わるのをさ。  試合が終わったらさ、もう私と向き合わなくていいもんね?  みんなのところに戻って、いつもみたいに優しくしてもらえるもんね?  でもだめ。  簡単には終わらせない。終わらせてあげない。  だって不当でしょう?  海くんみたいな最悪な人間には、もっと最悪な思いをしてもらわないと。  それにこの場が終わっても、どんなにみんなから優しい言葉を投げかけてもらっても、  わたしの海くんへの軽蔑は絶対消えないよ。  聖域の設備は優秀だからさ、外傷とか死とかは簡単にリカバリーしてもらえるけど、  わたしの海くんに対する否定は永遠に残るよ。  ほらね、言ったでしょ。  わたしが海くんを一方的にいたぶるだけだって。  強さとかね、関係ないの。  わたしは海くんの嫌なところを暴くだけだから。  素早さもね、関係ないよ。  そりゃ体力も身のこなしも海くんの方がいいけどね、私が先行させてもらうよ。  ほら、何も言えなくなったでしょ? そうじゃなきゃ困るよ。  海くんが不細工に謳うの、わたし聞いてられないから。  あ、ちなみにいまわたしが喋ってるのってただの先行剣だから。  海くんの詠唱剣を破壊するのはこれからだよ。  まあぶっちゃけ、わたしが本当にむかついてるのは海くんがそういうエセ魔法を使ってることなんだけどね。  ほらこれ見て。ブチノメイスって言うんだけどね。これが破壊剣なんだけど。  はい、これで私は今から海くんを殴ります。  そう。海くんのことは言葉で罵倒したくらいじゃ気が済まないんだよね。  幸い試合が終わるまでは外野からの介入もないしさ、存分にいたぶらせてもらうね。  は? なに後じさってんの?  だめだよ。そこにいなさい。  じゃないと私が海くんを殴れないでしょ。  聞こえないの? そこにいなさい。  そこにいろっつって言ってんの。耳ないの?  なんで逃げようとするわけ?  もう勝てないって分かってるんでしょ。  苦しい時間は早く終わらせたいんじゃないの?  そう。じっとしてればいいのよ。逆らわずにね。  じゃあお願いして。  『そのブチノメイスでぼくの腰骨を叩き壊してください』って。  でね、それを言ったら叩き壊すのやめてあげるから。  分かる? 反対言葉ってやつ。  何も言わなかったら逆に、やってほしいっていう意志表示と見なすから。  ほら、言いなよ。  言わないの? そうなんだ。ふうん。じゃあ叩き壊すね。  ……。  そう。  言ったね?  そんなに海くんは自分の腰骨を、このブチノメイスで叩き壊して欲しいんだね。  さすがに反対言葉とか意味わかんないし、何も言わなかったらやめようかと思ってたんだけど、  そんなに必死に頼まれちゃあやってあげない訳にはいかないわよね。  ほら逃げない。  いくよ。  味わってね。  せーの、ほらっ!  うわあ、やったあ!  すごいザマだよ海くん、人体とは思えないくらい曲がってるよ!  海くんのスリムなプロポーションもこれで台無しだね!  ごめんちょっと踏ませてね。  痛い? 痛いかな?  痛くないでしょ? 痛くないよね?  え?  いやそんな泣きながらじゃなくてさ、いつもみたいなブリッ子キャラで通しなよ。  『痛いですぅ!』とかさ。  あー、違う違う。  『すぅ!』って間抜けな語尾をちゃんと再現しなきゃだめでしょ。  はいもう一回。  ちゃんと言えないと二撃目の破壊剣を打ってあげないよ。ぐりぐり踏み続けるよ。  踏むのは一撃目の延長だから。二撃目じゃないから。  うん、もうこれから海くんを殴り殺すことは決まってるからさ。  後はどれだけ長引かせるかってだけの問題なんだよ。  ほらまだ1ターン目が始まったばかりなんだよ。  え? もうやめてって? 負けを認めるから解放してくれって?  だめだめ。  剣師の戦闘って一度始まっちゃったら止められるもんじゃないでしょ。  それに、海くんさっき自分で言ってたよね。  勝負なんてやってみないと分からないって。  だったらまだ試合投げないでさ、頑張ってみなよ。  ほら、ファイト!  がんばれ!  立って!  海くんがんばって!  ……もう。  泣いても叫んでも、誰も助けてはくれないんだよ?  だったら自力で何とかするしかないよね。  で、まだ言えてないよね。『痛いですぅ!』ってやつ。  もう一回。  だめもう一回。  だめ。  だめ。  だめ。  あとちょい。  そう。もう一回。  そう。いいよ。もいっちょ。  そう。  うふふ、いいね。良くなってきたね。  いい感じにむかつくんだよね、その喋り方。  テンション上がってきたし、そろそろ二撃目いきますか。  さて、どこを狙うと思う?  頭? 指? 足? どれも違う。こたえは腰骨。もう一回そこいくよ。  せーので叩きつけるから、ちゃんと言ってね。  『腰骨痛すぎるですぅ!』って。  あと一回だけだから、一発で言ってね? ちゃんと言ってね?  そのために練習させたんだから。  もしうまく言えなかったら本当に一時間でも二時間でも長引かせるからね。分かった?  それじゃあいくよ。  せーの、それっ!  ……おー。  ふふふ。  今すごく良かったよ。誉めてあげる。  本当に海くんの嫌な喋り方の嫌なところがクローズアップされてて、  痛がってるのにちっとも同情する気が起きなくてむしろより一層痛めつけたくなるこの感じ。  すごくいい。  ほら海くんの体もビクビクして、加速剣やら加熱剣やらが勝手に吹き上がってる。  ああ、これは我慢できないわ。  よし、ちゃんと言えたからご褒美ってことにしてあげる。  もう次の一撃いっちゃうよ。今度は腰骨破壊剣じゃなくて剣戟剣なんだけどね。  そうだね、弁慶の泣き所でも打つか。  ほら、仰向けになって。  剣戟剣は剣を壊す剣じゃないから、ほどほどの力で打つしかないんだけどね。  だから骨ごと神経ごとぶっ壊すよりもむしろ痛いかも知れないよ。ほんと楽しいね。  ね、楽しいね。  じゃあいきますか、三発め。  せーの。  ……それっ!  あー思いっきり打っちゃった。痛そー、大丈夫? ねえ大丈夫? 痛いとこない? 怪我とかない?  あれ、ショック死しちゃったかな?  お、HP1残ってた!  まだ生きてた!  やったー!  まだこれ続けられるんだ!  うれしい!  ったく海くんったら、変にエセ魔法なんか使うからこういうことになるんだからね?  分かった?  あー違う、だから『分かりましたですぅ!』だってば……」 -------------------------------------------------------------------------------- 結果 -------------------------------------------------------------------------------- 勝利者:倉石 スー --------------------------------------------------------------------------------