-------------------------------------------------------------------------------- 戦闘開始 -------------------------------------------------------------------------------- しょうちゃん:5/0/0/3/導来剣0、黙祷剣、胎胎剣、咲火剣、詠唱剣、爆撃剣 有坂 :5/2/0/3/導来剣0、魔封剣、破壊剣、猛毒剣 -------------------------------------------------------------------------------- 処理 -------------------------------------------------------------------------------- (ヒモがほつれてる……) 巨大な体躯。 腐臭のする肉塊。 悪趣味という悪趣味を結集させた禍々しい姿。 それが動いていた。 糸の張力や内臓されたギアやらの巧妙な仕掛け。 ふんだんな途心液の流れる腸が、体中をポンプのように這っている。 全身のパーツパーツに好き勝手な挙動を許しながら、なんとかつじつまを合わせて教師の指示に従い演舞場に立つ。 しょうちゃんは右に左に揺れながら、意味の切れ端らしきものをぶつぶつつぶやいている。 (ヒモが……) だが有坂は気になっていた。 ヒモがほつれていたのだ。 しょうちゃんのジーンズの縫い目のところのヒモがほつれて、豚の尻尾のように一本出ている。 訳のわからんガスを発して動いているしょうちゃんそのものよりも、そのことばかりが気になって仕方がなかった。 しょうちゃんだってシステムだ。 このシステムはMPで回る。 戦闘開始と同時に、しょうちゃんは高速で黙祷剣を起動してMPを生成した。 同時に有坂も動いていた。 (ヒモのほつれだけ直して、それから戦おう) 机にゴミがあれば払う。 壁にボタンがあれば押す。 そこにそれがそうなっていたら生理的にもう、そうしたくなる。 有坂は揺れるしょうちゃんに近づいて、ジーンズから出ているヒモを引っ張った。 その行為が手馴れた高速魔封剣となっていたことを有坂は意識していなかった。 ヒモは短く、あっさりと抜けてほつれも消えた。 それがまずかった。 ヒモで留めてあったところが、ばっくりと裂けてしまった。 それもジーンズのみではなく下の肉塊まで開いて漏れる。 ふいいいいいいいいいいいい! しょうちゃんの右肩のパーツが甲高い悲鳴を上げる。 左腕が暴走してぐるぐる回る。 全身の体表を蛇のようなものが蠢く。 しょうちゃんの上部にいくつかついてる顔がいっせいに賛美歌を歌いだす。 しょうちゃんはギリギリのMPで回っているシステムだ。 そこにちょっと傷が入ってしまったらどうなるだろうか? 胎胎剣も爆撃剣も打てなくなってしまう。 しょうちゃんは狂ってしまった。 明らかに想定外の狂い方だった。 ヒモなんて放っておけばいいのに。 有坂が余計なことをするから。 やらなくていいことをするから。 よせばいいのに相手の服装なんて気にするから。 「え……ち、ちが……」 有坂は焦った。 みんなの白眼視に耐えられず、叫んだ。 「ちがう!」 有坂の絶叫に呼応して、しょうちゃんの尻から内容液が激しく噴出した。 液体はズボンを突き破り、ちょうど後ろに体育座りしていた女子生徒の全身に浴びせられる。 破壊剣。 有坂は知る由もないが、高周波の絶叫がしょうちゃんの体を支える鉄柱、腰骨に相当する部分を折ってしまったのだ。 折れた先端は下腹部の内臓を破り、内圧で液体が尻から飛び出た。 どういう仕組みになっているのか、生成されかけた有翼の畸形マトリョックスも地面に落ちて潰れる。 しょうちゃんが不自然に右に傾斜する。 腰骨をなくしてしまったせいで、体全体が折れかけているのだ。 有坂は横に回ってそれを抑えようとした。 それが止めだった。 猛毒剣。 有坂が突き出した手が、しょうちゃんの脇腹の急所を直撃してしまう。 破綻が破綻を招き、しょうちゃんは泡を吹きながら自壊していった。 「有坂がしょうちゃんを壊したー!」 「そこまでして勝ちたいかよ!?」 「熱い、熱いよー」 演舞場はパニックになった。 -------------------------------------------------------------------------------- 結果 -------------------------------------------------------------------------------- 勝利者:有坂 --------------------------------------------------------------------------------