千夜一夜の果てに ヒヨリ

ステッパーズ・ストップ 千夜一夜の果てのヘレン

[0-773]

ヒヨリ

性能

HP2/知3/技8

スキル

・全力手当/204/0/20 回復
・通常手当/84/0/10 回復
・応急手当/12/0/4 回復

プラン

1:相手のウェイトが21以上ならば全力手当
2:相手のウェイトが11以上ならば通常手当
3:さもなくば応急手当

設定

女。
リソースガード。

不揃いなツーテールが目印の黒髪の女。
回復魔法に長ける彼女は、
リソースガードで傭兵の治療をすることで収入を得ている。

治療をした相手からは、治療代とは別に硬貨を1枚を受け取る事にしている。
それは銅貨でも銀貨でも金貨でもなんでも良い。

「助けた者から受け取った硬貨の枚数を数える事」それが彼女の幸福である。

非番の時は町中をフラフラ歩いては治療する対象を探している。
治療の対象は問わず、「金が無いもの」「動物」「敵対勢力」なども治療しており、
苦しむもの全てを救おうとしている節がある。

回復魔法は患部に手を接触させる事で発動し、黄緑色の光が出て外傷を癒す。

明るく振る舞い気楽な性格に見えるが、
ときどき難しい顔で考え事をしている姿が見られる。

「唾つけときゃ治るわよ」
「痛いの痛いの飛んでいけ〜」
「アタシはね、"誰であろうとも助けてしまう"女なの。そういう女なのよ」

---
彼女は子供の頃に馬車に轢かれて大怪我をし、通りすがりのヘレン教信者に助けてもらった事がある。
彼女はヘレン教にとって忌むべき黒髪であるが、それにも関わらずその信者は彼女を助けてくれた。

彼女の"助けたがりや"病は、その時から続いている。
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オーナー

アスロマ

http://uramangetsu.x.fc2.com/

ツイッター asuroma82

[5] 2012/05/13 01:19:49
【ヒヨリ:No.1 『リソースガードのコイン女』】 by アスロマ

カチャリ、カチャリ、カチャリ、カチャリ、カチャリ、カチャリ、カチャリ、カチャリ、カチャリ、カチャリ、カチャリ、カチャリ、カチャリ、カチャリ、カチャリ、カチャリ、カチャリ、カチャリ、カチャリ、カチャリ……。

リソースガードのクエスト仲介所は今日も人が溢れていた。その待合テーブルの上に硬貨の塔が建設されている。建設しているのは黒髪ツーテールの女だ。
「……ふう」
カチャリ。女は細い指でコインをつまみ、慣れた手つきで硬貨を乗せる。小さな音とともにまた一つ塔が高くなっていく。
女の名はヒヨリ。ヒヨリは硬貨を積み重ねるという奇妙な趣味から、別名“コイン女”と呼ばれている。仲介所の人々はそんなヒヨリの行動に慣れているのか、それを気にとめるものはほとんどいない。

ガヤガヤとした喧騒の中、仲介所の外からクエストを終えた傭兵が帰ってきた。その緑髪の傭兵は僅かだが腕に傷を負っていた。ヒヨリは硬貨の塔を作るのを中断して、その傭兵に歩み寄る。

「その傷を私に癒させてくれませんか?その程度の傷なら治療代は結構です」
ヒヨリは精霊駆動技術を利用した回復魔法の使い手だ。その腕前はリリオットでも指折りである。
「……ですが、傷を治した記念に銅貨を一枚頂けないでしょうか?それが私の勲章なのです」

こうして、硬貨の塔は今日も建築資材を増やしていく。

[29] 2012/05/14 23:00:07
【ヒヨリ:No.2 髪の色】 by アスロマ

「ありがとう」
ヒヨリは受け取った銅貨を硬貨の塔の上に重ね、緑髪の女傭兵としばらく話しをした。
彼女は『救済計画』に興味があるようだった。いきなり声をかけられて挙動不審な態度を取ってしまったヒヨリは、仲介所に集まる傭兵にそれとなく聞いておこうと心に決める。
それはさておき、ヒヨリはさらにコインを積んでいく。
カチャリ……。硬貨の塔を更に何枚か積み上げた後、ヒヨリは袋の中のコインを摘まんで静止した。
その姿勢のまま、先ほど歩いていた柔らかい金髪を携えた女を思い出す。束ねた金髪があまりにも綺麗に輝いていたので、つい目を奪われたのだ。その女の手にはリソースガードの申請書類が握られていた。
ヒヨリはコインをテーブルに置き、頭の右に束ねた髪の毛を摘まむ。黒くてゴワゴワした髪の毛が視界に入り、ヒヨリは一つ溜息をついた。
「綺麗な金髪(ブロンド)だったわね……」
子供の頃、ヒヨリは馬車に轢かれて死にかけた事がある。その時に助けてくれたのはヘレン教の金髪の女性だった。昔の事で顔は思い出せないが、その美しい金髪は今でも印象に残っている。
「さっきの子、無事に傭兵になれるといいけど」
傭兵登録はそれほど難しいことではない。だが、先日登録でごたついている人を見たばかりなのでヒヨリは少し心配になった。
受け入れられない事は悲しい事だ。ヒヨリは自分がヘレン教に入信しようとした時の事を思い出して少し悲しくなる。
ヒヨリは黒髪人種であり、それは変えようがなかった。ヒヨリはヘレン教に入りたかったが、ヘレン教は黒髪を受け入れなかった。

ヒヨリは思う。
いつだって、みんなどこかで苦しい思いをしている。
だからヒヨリは助けるのだ、少しでも多くの人々を。

[44] 2012/05/15 22:45:16
【ヒヨリ:No.3 「1/16384」】 by アスロマ

ピンッ……パシッ。
リソースガードの仲介所で、ヒヨリは指で1ゼヌ銅貨を弾きながら聞き耳を立てていた。仲介所には多くの傭兵が集まり、毎日色々な話題が飛び交っている。ヒヨリは誰かが『救済計画』という言葉を口にしたら、すぐにでもすり寄って話を聞かせてもらうつもりだった。
しかし、いつまでたってもそのような言葉が聞こえてくる気配は無い。
「うーん、他の場所でも聞いてみようかなあ……」
別の回復術の使い手が仲介所にやってきたのを見て、ヒヨリは銅貨を弾きながら考える。
最近どうも黒髪に対する風当たりが強くなっていたので、ヒヨリは外を歩き回るのをなるべく控えていたのだ。
ピンッ……パシッ。
「ま、万が一の事なんか気にしていたら何もできないよね」
そう言うと、ヒヨリはテーブルの上のコインをかき集め席を立った。

ヒヨリは気付いていなかったが、ヒヨリが考え事中に弾いた14枚の銅貨は、全て裏を向いていた。

[56] 2012/05/16 22:24:59
【ヒヨリ:No.4 「青いソラ」アスロマ】 by アスロマ

緑髪の傭兵が聞いてきた『救済計画』とは何なのか。
それを調査するために、ヒヨリは仲介所の外へ出る。すると、ヒヨリの視界に苦しそうな顔をした少女が映った。その少女は青い帽子に金色の髪を携え、澄み切った空のような青い瞳をしていた。ヒヨリは、少女の顔がその青い瞳と同じくらい青ざめているように感じた。
「あら……こんな所でどうしたの。顔色が悪いわよ」
ヒヨリはそんな少女を放っておけず、少女に近づき回復術を行使する。ヒヨリの回復術は『時間遡行による回復術』と『肉体の自然治癒力を高める回復魔法』の合わせ技だ。体調不良にもそれなりに効果がある。
「あ、ありがとうございます」
「お礼なら硬貨を一枚くれないかしら?」
少女の顔に少し精気が戻ったのを見て、ヒヨリはすかさず硬貨を要求した。しかし、返って来たのは予想外の言葉だった。
「あの……私の依頼をうけてもらえませんか」

その少女の依頼は、「『救済計画』について調べ、ウォレスという青髪の少年に伝えてほしい」という内容だった。ヒヨリは丁度『救済計画』について調べようと思っていた所だ。断る理由は無い。
「まず、あなたの名前を教えて頂けますか」
「ソラといいます」
「ソラ……いい名前ですね。ソラさん、その依頼はこの私、ヒヨリが確かに承りました」
「あ、ありがとうございます!」
ソラが笑顔を見せる。その笑顔の可愛らしさにつられ、ヒヨリは自分の心が明るくなっていくのを感じた。
「ですがこの依頼。“依頼”じゃなくて“約束”にしてもいいかしら」
「はい?」
「ああっ!誤解しないでね。”依頼”だとリソースガードを仲介しないと怒られちゃうのよ。安心して、アタシは『“約束”を必ず守る』と傭兵達の間でも評判だから」
パチリとウインクをしながらヒヨリが笑顔を見せる。傭兵達の間に実際にそのような評判はないが、ヒヨリはヒヨリなりにソラを不安がらせないように気づかったのだ。
「わかりました。では“約束”。よろしくおねがいします」

[84] 2012/05/18 22:23:44
【ヒヨリ No.5 「一人救済計画」】 by アスロマ

『救済計画』について調べるため、ヒヨリはメインストリートを歩く。
右へフラフラ、左へフラフラ、粗霊(あられ)揚げをカリカリ。
だが具体的な情報は何一つ手に入れる事ができなかった。
ヒヨリはメインストリートの乞食たちに銅貨を与え、「何か『救済計画』について聞いたら教えて」と協力を仰ぐ。

しばらく歩いた後、メインストリートの端で、ヒヨリは一人の弱りきった老齢の乞食を見つけた。
ヒヨリはその乞食に銀貨を与え、回復魔法を施しながら願う。
まだ名前しか知らない『救済計画』が、その名の通りに誰かを救うものでありますようにと。

[224] 2012/05/27 17:08:33
【ヒヨリ No.6(last) 「夜空」】 by アスロマ

黒髪のリソースガードであるヒヨリは、数日ほど「救済計画」について調べていた。しかし、なかなか情報を手に入れることができない。そこで、ヒヨリは情報を集める範囲を広げることにする。

だがそれは誤った選択だった。「夜間と裏路地の徘徊だけはするな」黒髪に対して理解のある人の中には、ヒヨリに対してこう声をかける者もいた。そう感じるほど、黒髪への迫害は加熱していた。

日の暮れた裏路地。ヒヨリは駆け去っていく襲撃者の背を見ながらうつぶせに倒れていた。ヒヨリの背には厚手のナイフがねじ込まれ、そこを中心に服に暗い染みが広がっている。いくら回復術に長けていても間に合わないほどの深い傷。それは死に至る傷だった。

ヒヨリは自分の死を悟る。

ヒヨリはうつぶせのままで懐から硬貨の詰まった袋を懐から取り出そうとする。だが袋はヒヨリの手から滑り落ち、硬貨が音を立てて辺りに散らばった。それは財布代わりの袋とは違う「人を救った記念の硬貨」だけを詰めた特別な袋だった。

ヒヨリは散らばった硬貨の中に一つだけ銀貨を見つける。
「(ごめんね、ソラ)」
彼女はそれを優しい手つきで摘まむと、その隣に転がっている銅貨の上に重ねる。
カチャリ……、ヒヨリにとって聞きなれた音が耳に届く。その音を聞き、ヒヨリは安心したように大きくひとつ息を吐きだす。

そして二度と息を吸うことは無かった。

彼女の髪のように黒い夜空には、金色の星が光っていた。

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